2002年8月14日水曜日

「やっぱり」連発はやっぱり駄目

2002.8.14


JA全中の宮田勇新会長のテレビインタビューをNHKニュースで見ました。日本の農業の今後についていろいろ語っておられましたが、むしろ面白かったのは、その内容よりこの方のお話の仕方。お口癖なんでしょうが「やっぱり」という言葉を盛んにお使いになる。曰く「やっぱり」食べ物は安全が第一だし・・・、「やっぱり」環境保全に配慮しなければ・・・、「やっぱり」農業が心の安らぎをもたらすということも考えて・・・、「やっぱり」主食は自給でなければならないし・・・エトセトラ、エトセトラ。「やっぱり」を短い3分ぐらいの間に30回ぐらいはお使いになってました(6秒に一回ですかね、計算すると)。

この「やっぱり」が気になって、テレビを見ている間、お話しの方はそっちのけで、もしこれを外国語に通訳しろと言われたらどう訳せばいいのだと考えていました。強いて言えば英語の場合 after all なんでしょうが、今ひとつフィットしない。すくなくとも after all は3分間に30回も使う言葉ではない。どうもこの方はこの「やっぱり」に、英語の after all の前にあるべき縷々とした議論を排除して、いきなり村落共同体に生きる人間の本能みたいなものに訴えるキーワード的意味合いを持たせているようなのです。「みんなが建前は別にして本音で期待しているとおりに」というような感じ。JA内部ではこれが説得力を持つのでしょうが(だから会長になられたのでしょうが)アウトサイダーにはとてつもなく違和感がありました。

企業でも社会でも、この「やっぱり」がはびこると改革は出来ないように思います。「やっぱり」日本式経営の良さも考えないと・・・、「やっぱり」公共事業の社会的役割も重要であって・・・、「やっぱり」郵便局の果たしてきた役割を考えると・・・、「やっぱり」間接金融主体の従来方式の良さもあって・・・、「やっぱり」日本の国際的な責任を考えると・・・「やっぱり」受験教育制度にもそれなりのいいところもあるし・・・エトセトラ・エトセトラ。すべて既得権益の擁護のために手垢の付くほど頻繁に使われてきた言葉ではないでしょうか。

はなしを農業に戻しますが、農業とは人間の歴史はじまって以来、もっとも基本的な産業でありました。産業である以上、人は生きるか死ぬかの覚悟で、その時代の最先端の技術を活用し効率性を追求することで生産活動に励んできました。広大な北海道の牧場もヨーロッパの緑の農地も、すべて人間が必死になって原始林を切り開いて「環境を変化させながら」造ってきたものじゃないですか。農業は環境に貢献するから非効率性が許されると言うことでは決してないのです。

全国各地の農村の生活風景を紹介するNHKの「ひるどき日本列島」をみていると、日本の農村では、本当にみんなが一緒に仲良く楽しく「園芸農業」をしているなあと実感します。趣味でやるぶんには結構なのですが、日本の企業では当たり前の国際競争のなかで命がけで競争にうち勝つぞと言う気迫が感じられないように見えます。

「やっぱり」を連発していると、やっぱり駄目になります。


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